地下型の雨水貯留施設を設計する際は、施設内部の構造形式として「空間貯留」と「空隙貯留」のどちらを採用するかを検討する必要があります。両者は、雨水をためる仕組みや使用する材料、空隙率、施工の自由度などが異なります。
本記事では、設計時に押さえておきたい両形式の違いと選定の考え方を解説します。
空間貯留とは(コンクリートBOX型)
空間貯留とは、場所打ちコンクリートやプレキャストコンクリートなどで地下に連続した空洞を形成し、その内部に雨水を貯留する構造形式です。比較的大規模な貯留施設に用いられることが多く、自治体の設計指針でも採用例が示されています。
空間貯留の構造と施工方法
ボックスカルバートやプレキャストコンクリート製品などを地下に設置し、構造物内部に設けた連続した空洞を貯留空間として利用します。コンクリート構造物そのものが貯留槽となるため、充填材のすき間を利用する空隙貯留とは異なり、構造物内部の空間そのものに雨水をためる点が特徴です。比較的大きな貯留容量を確保する施設で採用されます。
空間貯留のメリット
- 大容量を確保しやすい:地下に大きな連続空間を形成するため、比較的大規模な貯留施設に対応しやすい。
- 構造がシンプル:コンクリート構造物内部の空間をそのまま貯留部として利用するため、仕組みを把握しやすい。
- 自治体指針での実績が多い:場所打ち・プレキャストコンクリートによる地下貯留施設として多くの設計実績がある。
空間貯留のデメリット
- 施工規模が大きくなりやすい:コンクリート構造物の設置を伴うため、施設規模によっては施工計画が大掛かりになる。
- 敷地形状の制約を受けやすい:連続した構造物を設置するため、複雑な敷地形状では計画上の制約が生じやすい。
- 浸透機能を持たせにくい:基本的に水密構造となるため、貯留した雨水を地下へ浸透させる用途には向かない。
空隙貯留とは(砕石・プラスチック充填型)
空隙貯留とは、砕石や樹脂製・プラスチック製の充填材などを地下に設置し、材料同士の「空隙」に雨水を貯留する構造形式です。底面・側面を透水性の構造とすることで、貯留と浸透を組み合わせることもできます。
空隙貯留の構造と施工方法
空隙貯留には、主に砕石を充填するタイプと、プラスチック製のクレートを積み上げるタイプがあります。砕石タイプは砕石同士のすき間、プラスチックタイプは部材内部や部材同士に形成された空間を貯留部として利用します。プラスチック製は部材を組み合わせて必要な範囲に貯留空間を形成できるため、敷地形状に合わせた計画を立てやすいことが特徴です。
空隙貯留のメリット
- 施設形状の自由度が高い:部材を組み合わせて設置できるため、L字型や変形した敷地にも対応しやすい。
- 軽量で施工しやすい:特にプラスチック製部材は比較的軽量で、搬入や設置時の施工負担を抑えやすい。
- 浸透機能と組み合わせられる:底面・側面を透水性にすることで、貯留と浸透を併用できる。
空隙貯留のデメリット
- 充填材によって貯留効率が異なる:砕石とプラスチック製では空隙率に大きな差があり、必要容量に影響する。
- 堆積物の管理が必要:流入する土砂などの堆積を想定し、泥だめます等の対策を検討する必要がある。
- 充填材の選定が必要:必要な貯留量や施工条件に応じて、砕石やプラスチック製部材などを選ぶ必要がある。
空間貯留と空隙貯留の違い比較表
| 比較項目 | 空間貯留 | 空隙貯留 |
|---|---|---|
| 構造の特徴 | コンクリート構造物の内部に形成した連続した空間に貯留 | 砕石やプラスチック等の充填材が持つ空隙に貯留 |
| 主な材料 | 場所打ちコンクリート、プレキャストコンクリート | 砕石、プラスチック・樹脂製部材など |
| 空隙率の目安 | 構造物内部の貯留空間を利用 | 砕石:約40%、プラスチック:約90~95% |
| 浸透機能 | 単体では基本的に持たない | 透水性の底面・側面とすることで併用可能 |
| 施工の自由度 | 構造物の形状・配置による制約を受けやすい | 充填材や部材を組み合わせて形状を調整しやすい |
| 主な用途規模 | 比較的大規模な地下貯留施設 | 中小規模から大規模まで、敷地条件に応じて幅広く対応 |
空隙率は静岡市「第4章 貯留施設の設計」における一般的な目安です。プラスチック製は90~95%程度、砕石は40%程度とされています。実際の設計では、採用する製品・材料の仕様に基づいて算定してください。
参照元:静岡市公式HP「第4章 貯留施設の設計」【PDF】(https://www.city.shizuoka.lg.jp/documents/7818/04.pdf)
プラスチック製が空隙貯留で選ばれる理由
空隙貯留の中でもプラスチック製部材が選択肢となる大きな理由が、砕石と比較した高い空隙率です。さらに、部材を組み合わせて貯留空間を形成できるため、敷地条件に合わせた配置を検討しやすいことも設計上のメリットになります。
高い空隙率(プラスチック:約95%、砕石:30~40%)
空隙率は、充填材の見かけの体積に対して、雨水を貯留できる空隙が占める割合です。静岡市の設計指針では、地下空隙貯留施設の空隙率は砕石で40%程度、プラスチック製で90~95%程度とされています。
例えば、プラスチック製を95%、砕石を30~40%とすると、同じ体積の施設でも確保できる貯留量には約2.4~3.2倍の差が生じます。特に砕石30%と比較すれば、プラスチック製は約3倍の貯留空間を確保できる計算です。必要貯留量が同じ場合、敷地や施設規模を抑えられる可能性があります。
参照元:静岡市公式HP「第4章 貯留施設の設計」【PDF】(https://www.city.shizuoka.lg.jp/documents/7818/04.pdf)
形状の自由度と工期の短さ
プラスチック製の空隙貯留は、部材を組み合わせて必要な範囲に貯留空間を形成できるため、L字型や変形した敷地など、コンクリート構造物では計画しにくい形状にも対応しやすいのが特徴です。
また、部材を現場で組み立てて施工できるため、施工工程の短縮にもつながります。具体的な施工工程や工期については、以下の記事で詳しく解説しています。
構造形式の選定に迷ったら
空間貯留と空隙貯留のどちらを採用するかは、必要な貯留容量だけでなく、敷地形状、施工条件、浸透機能の必要性、自治体の設計基準などを踏まえて判断することが重要です。特に空隙貯留では、充填材によって空隙率や施工性が異なるため、製品仕様まで確認して比較しましょう。
当メディアでは、大規模・中規模・小規模という開発規模別に、雨水貯留槽のおすすめ製品を厳選しています。空隙貯留を設計候補として検討している場合は、必要容量や敷地条件に合う製品を探す際の参考にしてください。

