雨水貯留槽はどんな場所に設置されているのか
ここでは、雨水貯留槽がどのような場所に設置されているのか、具体的な例とともにご紹介します。
学校・保育施設
雨水貯留槽は、学校や保育施設の地下に設置されるケースが多くあります。比較的広い敷地が確保できる上、避難場所としても活用されることが多いため、災害時の緊急用水を確保するという点でも雨水貯留槽の設置に適しています。
茨城県にある保育園では、グラウンドの下に貯留量416m³の雨水浸透槽を設置しました。この雨水対策によりグラウンドの水はけが良くなり、子どもたちが外遊びしやすい環境を作っています。
事例
- 保育園…貯留量416m³ 用途:グラウンド
- 公立中学校…貯留量1,010m³ 用途:運動場
- 小学校…貯留量800m³
商業施設
大型ショッピングモールの駐車場など、商業施設はまとまった敷地が確保できるため、大容量の貯留施設の設置が可能です。また、コンビニエンスストアやドラッグストア、飲食店といった小中規模店舗の駐車場にも埋設されています。
事例
- 某大型ショッピングモール…貯留量1,690m³ 用途:駐車場
- 某中型店舗…貯留量850m³ 用途:駐車場
- 埼玉県内商業施設…貯留量500m³
- 千葉県内商業施設…貯留量100m³
民間住宅(宅地)
雨水貯留槽は、民間の宅地造成時にも設置されることがあります。大規模な開発を行う際に、雨水貯留浸透施設の設置を検討することで、無理や無駄のないまちづくりが実現します。
事例
- 千葉県大規模宅地開発工事…貯留量4,400m³ 用途:駐車場
- 埼玉県まちづくり造成…貯留量2,100m³(140宅地×15m³)
その他
上記以外にも、街中のさまざまな場所に雨水貯留槽は設置されています。
その他の事例
- 静岡県内農場…貯留量16,500m³
- 石川県内区画整理調整池…貯留量9,200m³
- 東京都内墓苑…貯留量1,000m³
- 埼玉県庁舎…貯留量710m³ 用途:駐車場
- 病院…貯留量110m³
- グループホーム…貯留量30m³ 用途:駐車場
敷地内で雨水貯留槽の「設置を避けるべき場所(不適地)」の設計基準
敷地内に雨水貯留槽を配置する際、単に空きスペースへ埋設するだけでは、建物や周囲の構造物へ重大な悪影響を及ぼす恐れがあります。安全上および法規制上、設置を避けるべき「不適地」の設計基準を解説します。
1. 建物基礎や隣地境界からの「離隔距離」が確保できない場所
貯留槽の設置位置が建物基礎や隣地境界に近すぎると、掘削工事時の地盤緩和や浸透水による土壌軟弱化を引き起こし、建物の不同沈下リスクが高まります。
そのため、設計にあたっては建物基礎や隣地境界線から最低でも30cm〜60cm以上(自治体の指導要綱や埋設深さにより異なる)の離隔距離を確保することが原則です。建物や境界線ギリギリへの配置計画は避け、十分な離隔を確保した配置計画を立てる必要があります。
2. 擁壁(ようへき)や急傾斜地の近接部(崖崩れの危険地域)
特に浸透型施設の場合、地中に大量の雨水を染み込ませることで地盤内の水圧が上昇し、斜面の滑り破壊や擁壁の崩壊・倒壊を誘発する重大な危険性があります。
「急傾斜地崩壊危険区域」などの法的な指定区域が不適地であることはもちろん、敷地内にある高さ2m以上の擁壁や斜面近傍に配置する場合は、原則として「擁壁の高さ(H)の2倍以上(2H)」の離隔距離を離すという自治体の設置指導要綱に基づく厳格な配慮が求められます。
3. 地下水位が「貯留槽の底面」よりも高い場所(浮力・隆起リスク)
プラスチック製貯留槽は空隙率が95%以上と高く本体が非常に軽量であるため、地下水位が貯留槽の底面より高い位置にある場所に設置すると、大きな浮力が発生します。これにより、槽本体が地表へ押し上げられ、上部のアスファルト舗装が隆起・破損する重大事故に直結します。
配置計画に際しては事前調査(ボーリング等)で地下水位を厳格に把握し、地下水位の高い場所への設置は原則避ける必要があります。やむを得ず設置する場合は、上部の土被りを極端に厚くして自重を増やすか、コンクリート基礎への固定やアンカー設置といった追加対策が必要となります。
設置場所について必要となる確認事項
公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会の「プラスチック製地下貯留浸透施設技術指針(案)」によると、雨水貯留槽の設計にあたっては、事前に以下の内容を調査・検討するように定めています。
- 計画貯留量
- 施工可能用地
- 計画流入高と計画排水高
- 排出先の条件
- 土質および地下水位
- 上部の利用方法
- 基礎地盤
- 流入する土砂量等
- 雨水の流入量
設計条件と確認事項
1.計画貯留量
雨水貯留槽に貯留する雨水の量を計画します。貯水量の算定にあたっては、水分設計(周辺の水の流れや存在状態を考慮した上で、流出モデルを設定・評価すること)を行います。設置の計画途中で貯留槽の高さや容量に変更があった場合は、再度計算が必要です。
2.施工可能用地
雨水貯留槽の適切な配置のために、用地の形状や大きさを明らかにします。埋設の深さや土被り等に関して要望や制約がある場合もあるので、あらかじめ自治体や施主の要件を確認しておきます。雨水貯留浸透技術協会の指針における貯留槽高の適応範囲は最大4mです。
3.計画流入高と計画排水高
貯留槽を埋設する深さや貯留槽の高さを決めるために、計画流入高と計画排水高を確認します。
4.排出先の条件
排水施設の設計のために、各自治体が設けている排水計画を確認します。あわせて、すでに設置されている下流管渠の排水能力など、排水先の条件も確認します。
で5.土質および地下水位
地質調査を行い、土質や地下水位を確認します。豊水期などで地下水位が一時的に上昇する場合は、外水圧や浮力の影響でシートや貯留槽構造体に負荷がかかるため、個別に検討が必要です。
また、浸透槽の場合は地下水位の上部に設置することが基本で、雨水貯留浸透技術協会の指針では貯留槽の底部から地下水位までの距離は50cm以上であることが望ましいとしています。この場合、土壌の浸透能力調査も同時に行います。
6.上部の利用方法
雨水貯留槽の上に積載できる荷重を決定するため、上部の土地の利用方法を確認します。
7.基礎地盤
掘削・基礎工事を行うのに十分な地盤支持力がないと予想される場合には、地盤改良工事や設置場所の再検討を行います。
8.流入する土砂量等
流入施設の仕様を決めるために、流れ込んでくる土砂や枯葉など夾雑物の量を推定します。
9.雨水の流入量
流入施設の仕様を決めるために、雨水の流入量を確認します。
まとめ
雨水貯留槽の設置にあたっては、用途や規模に応じた適切な容量算定に加え、建物基礎からの離隔距離や急傾斜地・高地下水位といった「不適地」の回避が安全設計の要となります。
確実な事前調査と専門メーカーへの早期相談
法的な要求(自治体の開発指導要綱や条例)を満たしつつ、土地利用効率を最大限に高めた配置計画を立てるには、事前の地盤調査や行政協議が欠かせません。
設置場所の適合性判断や設計方針で悩む場合は、技術的ノウハウと全国での導入実績が豊富な専門メーカーへ早期に相談し、確実で安全性の高い雨水管理計画を構築しましょう。

