港区内で建築物の新築や増改築、駐車場の新設などの開発案件を抱える設計者やデベロッパー向けに、「雨水流出抑制施設設置指導要綱」の概要を解説しています。
港区の雨水流出抑制施設設置要綱と対象事業
港区が定める「雨水流出抑制施設設置指導要綱」は、水害に強い安全なまちづくりを推進するために、開発事業の規模に応じた雨水流出抑制施設の設置を求める制度です。
民間企業や個人が実施する一定規模以上の事業において、この要綱に基づく施設の設置義務が生じます。
実務者が最初に確認すべきポイントは、計画している事業が対象となる敷地面積や行為の条件を満たしているかどうかです。具体的にどの程度の規模から設置が必要になるのか、そしてどのような背景からこの制度が運用されているのかを正確に把握しておくことが、その後のスムーズな設計や手続きに直結します。
要綱が策定された背景と目的
この要綱が策定された背景には、都市化や市街化の急激な進展があります。かつては地中に浸透していた雨水が、地表がコンクリートやアスファルトで覆われたことにより、短時間に集中して下水道や河川へ流れ込むようになりました。
都市型水害のリスクが高まるとともに、湧水量の減少も懸念されています。そのため港区では、雨水の地下浸透を促進し、湧水地の保全による健全な水循環系を構築することを目的として要綱を策定しました。
総合的な治水対策や豪雨対策の一環として、区を挙げた取り組みが進められています。
設置が必要となる対象事業の条件
民間企業や個人が実施する事業において、設置が指導される具体的な条件は「250平方メートル以上の敷地」で実施される開発行為です。
該当する行為としては、建築物の新築や増改築、あるいは駐車場の新設、増設、改修を行う事業が含まれます。この基準面積以上の計画であれば要綱の対象となります。
なお、国や東京都、区などが実施する公共的な事業においては、敷地面積の規模に関わらずすべてが対象事業として扱われます。実務にあたっては、まず事業予定地の敷地面積が250平方メートル以上かどうかを必ず確認してください。
敷地面積に応じた雨水流出抑制対策量の算定基準
開発案件において求められる具体的な「雨水流出抑制対策量」の算定基準は、事業の主体や敷地面積の規模によって細かく異なります。
特に民間企業等が実施する事業の場合、敷地面積が500平方メートル以上か未満かによって、単位面積あたりに求められる対策量の基準値が変わるため、正確な確認が不可欠です。
また、敷地内に設置する雨水流出抑制施設は、地下に埋設する専用の貯留槽や浸透ますだけに限られません。条件を満たす多様な要素を抑制量の対象として算入できるため、基準を正しく理解し、現場の状況に応じた柔軟な設計アプローチを検討することが空間の有効活用につながります。
民間事業における敷地面積500㎡を境とした基準の違い
民間事業において求められる要綱上の目標値「抑制対策量」は、敷地面積500平方メートルを境界として基準が異なります。実際の設計計画から算出される「計画抑制量」が、この抑制対策量を満たすよう設計を行う必要があります。事業主体と敷地面積に応じた基準は以下の通りです。
| 事業主体 | 敷地面積 | 必要抑制対策量 |
|---|---|---|
| 公共的事業 | 面積に関係なし | 100㎡あたり6㎥以上 |
| 個人・民間企業 | 500㎡以上 | 100㎡あたり6㎥以上 |
| 500㎡未満 | 100㎡あたり3㎥以上 |
植栽や透水性舗装など貯留槽以外の対象要素
雨水流出抑制の計画において、地下に埋設する専用の貯留施設や浸透施設だけが対象となるわけではありません。敷地内に設ける芝生、植栽、草地、あるいは透水性舗装なども、抑制量の対象としてカウントすることが可能です。
港区の手引きには、それぞれの要素に対する「単位貯留・浸透能(㎥/㎡)」が明確に設定されています。たとえば、植栽は0.05㎥/㎡、透水性舗装は0.02㎥/㎡となります。
実務においては、浸透ますや浸透トレンチとこれらの植栽や透水性舗装を組み合わせることで、求められる計画抑制量を効率的に満たすアプローチが可能となります。敷地の特性を活かした計画をご検討ください。
事前協議から完了届までの手続きフロー
港区での手続きは、設計着手前の事前協議から工事完了後の完了届に至るまで、スケジュールを逆算して進める必要があります。
特に大きな変更点として、令和7年4月1日より、計画書や完了届の提出が「港区電子申請ポータル」を通じたLoGoフォームでの電子申請へと移行しました。電子メールでの受付は行われていません。
デベロッパーや設計者における実務上の注意点は、計画書に関する手続きを「建築確認申請の提出前」に完了させておく必要がある点です。各ステップの審査期間も考慮し、書類不備による手戻りを防ぐためにも、全体のフローを網羅的に把握して余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
事前協議と計画書の電子申請(LoGoフォーム)
1.電話予約
手続きの第一歩として、まずは各地区担当者へ電話で予約を行い、案内図や現況図、抑制施設計画図等の資料を窓口へ持参して事前協議(相談)を実施します。
2.雨水流出抑制施設設置計画書の電子申請
協議を経て方針が固まったら、建築確認申請を提出する2週間前(建築確認申請前)までに、LoGoフォームの「雨水流出抑制施設設置計画書」から電子申請を行ってください。
申請者は施工者ではなく施主(法人の場合は代表者名)となり、書類への押印は一切不要です。
3.審査完了
提出書類に不備がなければ、約14日間で審査が完了し、確認印が押印された表紙データや添付資料一式が送付(返却)されます。
建築確認申請の前に本手続きを完了させる必要があるため、逆算した早めの対応が必要です。
工事完了前の事前相談と現場確認・副本返却
4.窓口での相談
施設の工事が完了する時期を見据え、工事完了(竣工)の2か月前を目途に完了届提出のための事前相談を窓口で開始してください。
5.雨水流出抑制施設設置完了届の申請
実際の工事が完了した後は、LoGoフォームの「雨水流出抑制施設設置完了届」から速やかに電子申請を行います。完了届や添付される工事写真等の書類に不備がないことが確認されると、区の担当者と日程調整が行われ、現場確認が実施されます。
6.審査完了
現場での確認作業や、必要に応じた是正工事、書類の修正などを経て、最終的に問題がないと判断されれば、約7日〜14日で確認印が押印された表紙データ等の副本一式が送付(返却)されます。
施工中の不可視部分の写真は審査で必須となるため、確実な撮影管理が求められます。
設計・施工上の制約と雨水貯留槽の導入
港区で雨水流出抑制施設を計画・施工する際には、いくつかの技術的な制約条件や留意事項が存在します。一方で、区が提示する標準構造だけでなく、メーカーが市販しているプラスチック製の雨水貯留槽などの商品も柔軟に導入することが認められています。
設計・施工時における主な制約と留意点
環境配慮や地下水かん養の観点から、計画においては「まず浸透施設での検討」が原則です。ただし、地下水位が高い地域や擁壁への近接箇所、空間確保が困難な場合は例外として貯留施設を検討します。また、浸透施設は建物基礎や敷地境界から30cm以上離して設置し、浸透ます等に用いる砕石は単粒度砕石を使用(粒度調整砕石は不可)するなどの制約があります。施工時は、床付けや砕石敷設等の不可視部分の写真撮影が完了届で必須となります。
メーカー製品を採用する際の要件
メーカー製品を導入する際は、港区が求める「計画放流量」を厳守し、貯留槽が有効に機能する設計とすることが条件です。また、申請時にはこれらの製品の性能を証明するため、「浸透能力(貯留能力)の計算書」や「製品カタログ」等の資料を計画書に添付する必要があります。
まとめ
港区での開発案件における雨水流出抑制施設の設計や申請手続きを滞りなく進めるためには、敷地規模に応じた設置基準を早期に把握することが鍵です。電子申請への対応や書類の不備を防ぐためにも、各地区の担当窓口へ早めに事前相談・予約を行いましょう。
引用元:港区ホームページ|雨水流出抑制施設設置のお願い(https://www.city.minato.tokyo.jp/dobokukeikaku/kankyo-machi/toshikekaku/shigaichi/amamizu/)
引用元:港区ホームページ|よくある質問(https://www.city.minato.tokyo.jp/dobokukeikaku/kankyo-machi/toshikekaku/shigaichi/amamizu/shitsumon.html)
引用元:港区ホームページ|雨水流出抑制チェックリスト【 計画編 】[※PDF](https://www.city.minato.tokyo.jp/documents/5912/202503_checklist-keikaku.pdf)
引用元:港区ホームページ|雨水流出抑制チェックリスト【 施工編 】[※PDF](https://www.city.minato.tokyo.jp/documents/5912/202503_checklist-sekou.pdf)
引用元:港区ホームページ|雨水流出抑制チェックリスト【 完了編 】[※PDF](https://www.city.minato.tokyo.jp/documents/5912/202503_checklist-kanryou.pdf)

