病院・医療施設に雨水貯留槽を導入する3つのメリットと設計要件
地域医療の拠点である病院や医療施設において、大規模災害時の機能維持(BCP対策)や、平時における敷地の効率的な活用は極めて重要な課題です。地下埋設型の雨水貯留槽は、医療機能を止めないためのインフラ強化と敷地の最大活用を同時に実現する設備として注目されています。ここでは、医療機関ならではの導入メリットと選定・設計要件を3つの視点から解説します。
1. 災害時のBCP対策:トイレ洗浄水と設備冷却水の確保
大規模災害が発生して断水に陥った際、病院内では透析治療や手術器具の洗浄などに貴重な上水が最優先で割り当てられます。そのため、患者や医療スタッフが使用するトイレの洗浄水や、空調・非常用発電機を動かすための設備冷却水といった「雑用水」が即座に不足するという深刻な問題が生じます。
地下に大容量の雨水を貯留しておくことで、水道が途絶した初期段階においても自立的に雑用水を確保し、医療機能の全停止を防ぐ強力なBCP(事業継続計画)対策となります。非常用手動ポンプなどを併設しておけば、停電時でも確実に水を取り出して運用することが可能です。
2. 救急車など緊急車両の動線下にも設置可能な「T-25耐荷重」
病院の敷地内は、24時間体制で搬送を行う救急車をはじめ、医療資材や薬品を運ぶ大型トラック、リネン供給車などが頻繁に行き来します。そのため、地下に埋設する貯留施設には極めて高い耐荷重性能が要求されます。
総重量25トンクラスの重量車両に耐えうる「T-25規格」に対応したプラスチック製貯留槽を採用し、適切な土被り(構造物天端から地表面までの厚み)と舗装設計を行うことで、救急搬送ルートや正面ロータリーの地下空間であっても陥没のリスクなく安全に貯留施設として活用できます。
3. 医療機関に求められる厳密な「衛生管理」と水質維持対策
衛生管理が最優先される医療現場では、貯留槽に起因する院内感染リスクや悪臭の発生、害虫(ボウフラ)の繁殖などを徹底的に防止しなければなりません。そのためには、設置後の水質と清掃性を考慮した設計計画が必要です。
具体的には、貯留槽手前の流入マスに微細フィルターや沈砂槽を配置し、落ち葉や泥などの有機物侵入を水際で遮断します。さらに、定期的な点検口からの高圧洗浄やバキューム清掃が容易な内部構造を選定しておくことで、衛生的な状態を低コストで維持し、長期にわたって安心して運用できます。
公共施設の雨水貯留槽施工事例

https://www.tensho-plastic.co.jp/cases/detail.php?id=29DJSQG
- 製品名・メーカー名…テンレイン・スクラム(天昇電気工業株式会社)
- 施工タイプ…貯留タイプ
- 施工場所や施設名…埼玉県春日部市
- 貯水量または広さ…127m³
引用元:天昇電気工業公式サイト(https://www.tensho-plastic.co.jp/cases/detail.php?id=29DJSQG)
テンレイン・スクラムについて
隙間を設けながら本体の部材を並べ、隙間をまたぐように重ねながら組み立てます。内部の空間を広く確保できる上、堅牢性と強度も確保しています。部材は片手で持ち運ぶことができ、ジョイント部材なしで簡単に組み立てられます。内部の空間は多様な用途に活用可能で、水位の点検口や通気口にもなります。
医療施設の雨水貯留槽施工事例

https://lyprone.com/hydrostuff/case/hospital/
- 製品名・メーカー名…ハイドロスタッフ(城東リプロン株式会社)
- 施工タイプ…浸透タイプ
- 施工場所や施設名…埼玉県の医療施設駐車場
- 貯水量または広さ…約30m³
設置範囲の工夫により、貯留槽の工事日数を減らしています。
引用元:城東リプロン公式サイト(https://lyprone.com/hydrostuff/case/hospital/)
ハイドロスタッフについて
円柱と梁を千鳥配置で組み合わせていく構造で、地震の揺れにも高い強度を確保しており、点検口からの点検・確認が容易です。リサイクル原料のペレットの製造や大型成形機による成型、組み立てを自社工場で全て実施。大型試験機や検査設備も完備して品質管理を徹底しており、ISO9001を取得しています。
鉄道駅の雨水貯留槽施工事例

https://www.risu-kogyo.co.jp/risurainstadium/#cases
- 製品名・メーカー名…リスレインスタジアムⓇII(リス興業株式会社)
- 施工タイプ…浸透タイプ
- 施工延長…50m
リスレインスタジアムⓇIIは、浸透トレンチとして使用も可能。
引用元:リス興業公式サイト(https://www.risu-kogyo.co.jp/risurainstadium/#cases)
リスレインスタジアムⓇIIについて
プラスチック製の部材を人力ではめ合わせて積み上げ、透水シートで包むことで雨水浸透槽になりますが、浸透トレンチとしても活用できます。従来使われてきた砕石トレンチに比べて空隙率が大幅に高いため、施工箇所をコンパクトにすることが可能です。素材の一部にリサイクル材料を使用しています。
役所庁舎の雨水貯留槽施工事例

https://lyprone.com/hydrostuff/case/public-facility/
- 製品名・メーカー名…ハイドロスタッフ(城東リプロン株式会社)
- 施工タイプ…浸透タイプ
- 施工場所や施設名…埼玉県の市役所庁舎
- 貯水量または広さ…約710m³
引用元:城東リプロン公式サイト(https://lyprone.com/hydrostuff/case/public-facility/)
ハイドロスタッフについて
円柱と梁をジグザグの千鳥状に配置してはめ合わせていく構造のため、砕石などの材料でできた従来型よりも空隙率が高くなっています。このため、点検口から内部を確認しやすくなっており、維持管理が容易です。流れ込む細かい土砂をパーティション1カ所に集める堆砂抑制システムも備えています。
大学病院の雨水貯留槽施工事例
神奈川県藤沢市でたびたび浸水被害が発生していた地域にある慶應義塾大学藤沢キャンパスに病院が建設されるのに合わせ、雨水貯留施設を整備。特定地域都市浸水被害対策事業として国と市が事業費の3分の1を補助し、1835m³の施設が設置されました。
本来は放流先となる河川の整備は長期間を要するが、国と市が民間事業者と連携することで、迅速な対策を講じることができました。
参照元:【PDF】国土交通省 資料(事例集)(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001429913.pdf)
まとめ
病院や公共施設への雨水貯留槽の導入は、地域の防災拠点・医療拠点としてのレジリエンス(対応力)を高め、災害時でも重要な社会機能を停止させないための戦略的インフラ投資です。限られた敷地の地下空間を有効活用することで、施設運営や緊急車両の通行を一切妨げることなく、大容量の治水・水資源確保を実現できます。
高度な安全・衛生基準を満たす製品選定を
救急車両の通過に耐えるT-25規格の強度確保はもちろんのこと、医療機関ならではの厳格な衛生管理やメンテナンス性、さらには自治体との協議や補助金の活用など、公共性の高いプロジェクトには専門的な配慮が欠かせません。
敷地条件や必要容量に応じた最適な工法を選定するためには、医療・公共施設での導入実績が豊富な専門メーカーや施工会社への初期相談が成功への近道となります。まずは自施設に最適なプランニングについて専門窓口へ相談し、確実な防排・BCP体制の構築を進めましょう。

