Q.雨水タンクと雨水貯留槽の違いは?
雨水タンクと雨水貯留槽は基本的に同じ意味ですが、雨水タンクは個人宅に設置するものを指すことが多いのに対し、雨水貯留槽はより規模の大きな施設を指すことが一般的です。雨水タンクはメーカーのサイトやホームセンター、住宅設備会社などで販売されており、大きさや素材も様々です。
Q.「貯留型」と「浸透型」の違いは何ですか?
雨水貯留浸透施設は、集めた雨水をどのように処理するかによって大きく「貯留型」と「浸透型」の2種類に分かれます。それぞれの仕組みと目的に合わせた使い分けが必要です。
「再利用・流出抑制」か「地中への還元」かの違い
「貯留型」は、貯留槽の周囲に遮水シートを施工し、槽内に雨水を一時的に貯留する仕組みです。溜めた水は散水やトイレの洗浄水として再利用したり、ポンプやオリフィス(排水口)を用いて時間をかけて少しずつ下水道や河川へ排出(流出抑制)したりします。
一方「浸透型」は、貯留槽の周囲に透水シートを用い、集めた雨水を槽からゆっくりと周囲の地中へ浸み込ませる仕組みです。雨水を自然な形で地中へ還元することで、都市型水害の軽減だけでなく地下水脈の保全や地盤沈下の防止にも寄与します。
敷地の地盤条件による使い分けの必要性
どちらのタイプを採用すべきかは、設置を予定している敷地の地盤条件(水はけの良さ)によって決定されます。
粘土質など透水性が低い土壌や、地下水位が浅く水が浸透しない場所では浸透型を設置しても十分な効果が得られないばかりか、機能不全を起こすリスクがあります。そのため、設計段階で事前の土質調査(ボーリング調査や現地浸透試験)を実施し、地盤条件に適した方式を選定することが不可欠です。
Q.強度の照査とは?
「強度の照査」とは、埋設された貯留槽が設計どおりの性能を満たしているかどうかを検査することです。構造物は地中に埋設されることで、鉛直(垂直)方向および水平方向に荷重がかかります。強度の照査は、この2方向の荷重についての構造計算値と、実物を使った圧縮試験から得られた貯留構造体強度の許容値を比較して行われます。
鉛直方向の強度の照査
貯留槽は埋設されることで、土被りや覆土によって鉛直方向に継続的な荷重(死荷重)を受けます。また、上部を駐車場などで活用している場合、車両の行き来によって断続的な荷重(活荷重)を受けます。
死荷重は、土被りの厚さや覆土の材料に応じて計算されます。たとえば、上部が駐車場として活用されておりアスファルト舗装されている場合、単位体積重量(kN/㎥)は22.5として計算されます。一方、学校のグラウンドのような土砂では18.0、人工池やビオトープのような水辺は9.8が基準とされ、地上を覆う材料によって荷重の計算方法が異なります。
活荷重は、T-25荷重(車両総重量25トン相当)の自動車荷重を原則として、衝撃係数を考慮して計算されます。
水平方向の強度の照査
貯留槽は埋設されることで、側面からも圧力を受けます。埋設の深さによって土圧が変化しますので、これに比例して地表面載荷荷重も考慮する必要があります。
コンクリート製の貯留槽の場合、土圧による変位や変形が極少とみなされるため、構造体や土が静止状態にある前提で計算される(静止土圧)ことが一般的ですが、プラスチック製の貯留槽の場合は荷重によってたわみなどが生じるため、埋設深さが4m未満の場合は、壁面から土圧を受けている状態(主働土圧)として計算を行います。
水平方向の強度は、側面の土質(粘着力)などによっても変化します。このほか、地震が起きたときの水平震度なども考慮して水平方向の強度の照査が行われます。
Q.雨水貯留槽の耐用年数は?
国土交通省の「雨水管理総合計画策定ガイドライン(案)改訂における課題と方向性(案)」によると、雨水調整池の躯体(コンクリート又は鉄筋コンクリート造)の標準耐用年数は50年とされています。
一方、市販の雨水タンクは、材質や設置環境によって耐用年数はまちまちですが、一般的には10年程度と考えられています。樹脂製は紫外線に弱いため、日当たりのよい場所に設置すると劣化が早まります。雨水タンクが直射日光にさらされる場合は、ステンレスやオーク樽の製品を選ぶとよいでしょう。
Q.雨水貯留槽の清掃義務はあるのか?
雨水貯留浸透槽について、法的な清掃義務はありません。しかし、安全面、衛生面、環境面などの観点から、定期的な清掃計画を立てておくことが望ましいと言えます。また、雨水の流出抑制機能、浸透機能を維持するためには、やはり定期的なメンテナンスが必要となります。
貯留槽の清掃は、排水溝・放流孔付近と土砂の除去がメインであり、比較的簡易に実施できるため、定期メンテナンスと兼ねることが一般的です。
なお、貯留槽と混同されやすい「貯水槽」については、有効容量が10㎥を超えるものは、1年に1回以上の清掃と水質検査が義務付けられています。
浸透槽の場合、目詰まりによる浸透機能の低下を抑制するため、土砂やゴミ・落葉などの撤去、目詰まり防止装置の清掃などを実施します。清掃場所が狭い場合や箇所が少ない場合は人力で行いますが、それ以外は吸引車や高圧洗浄機などを併用して行うのが効率的です。
いずれも、施設は定期的かつ継続的に維持管理することが重要です。定期点検は年1回以上、梅雨や台風シーズンの前に行うことが望ましいとされています。
Q.設置工事に補助金や助成金は使えますか?
雨水貯留槽や雨水浸透施設の導入にあたっては、多くの自治体で公的な助成金・補助金制度が用意されています。
自治体による「設置助成金制度」の活用
近年激甚化するゲリラ豪雨や都市型水害の対策(流域治水)として、多くの市区町村が設置費用に対する助成制度を設けています。対象となる費用は材料費や工事費などで、「設置費用の1/2〜2/3(上限数十万円〜規模により数百万円)」といった助成が受けられるケースが一般的です。
ただし、ほとんどの自治体において「工事着工前の事前申請」が制度利用の絶対条件となっています。工事を開始・完了した後に申請を行っても補助金を受けることはできないため、計画初期の段階で管轄の自治体窓口(下水道局や治水課など)へ対象要件や申請手順を確認しておくことが実務上きわめて重要です。
Q.雨水貯留槽を設置できない場所(不適地)はありますか?
雨水貯留槽は地中のあらゆる場所に自由に設置できるわけではなく、安全性や機能面から設置を避けるべき「不適地」が存在します。
地下水位が高い場所や急斜面の近接地
代表的な設置不適地として、まず挙げられるのが「地下水位が貯留槽の底面よりも高い場所」です。浮力によって構造体が持ち上げられたり、破損・変形したりする事故リスクが高まります。
また、「急傾斜地崩壊危険区域」や崖の近くなどの斜面近接地も不適地とされます。特に浸透型の場合、大量の雨水が地中にしみ込むことで地盤が緩み、崖崩れや土砂災害を誘発する恐れがあるためです。
このほか、近隣の井戸水への影響や土壌汚染の可能性があるエリアも設置には適していません。トラブルを未然に防ぐためにも、メーカーが定める設計基準や自治体の設置ガイドラインに基づき、適切な配置計画を立てる必要があります。

