プラスチックと環境の調和へ
SDG'sと雨水貯留浸透槽

今やさまざまな場面で耳にすることが多くなった「SDGs」は、企業活動には欠かせない取り組みとなっています。2015年に提唱されたSDGsは「Sustainable Development Goals」の省略形で、日本語では「持続可能な開発目標」。2030年までに実現を目指す30の目標が並び、どの企業も目標ひとつひとつに向けた取り組みのアピールに懸命です。
雨水貯留槽や浸透槽のメーカーも、SDGsに無関係ではありません。近年、ゲリラ豪雨や線状降水帯による豪雨の増加により、各地の治水対策が急がれています。雨水貯留槽・浸透槽は、雨水を処理して浸水を防ぐことで、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」や目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献しているのです。
一方で、貯留槽や浸透槽にはプラスチックが大量に使われています。石油製品であるプラスチックと環境との調和は、どう図られているのでしょうか。特にISO14001環境マネジメントシステムを取得している企業での取り組みの中から、雨水貯留槽・浸透槽とSDGsとの関係を見ていきます。
雨水貯留槽の導入が直結する「SDGsの3つの目標」
雨水貯留槽や浸透槽の整備は、単なる水害対策にとどまらず、企業のサステナビリティ経営において重要視される「SDGs(持続可能な開発目標)」の複数のゴール達成に直接寄与します。
ゴール6「安全な水とトイレを世界中に」への貢献
地下に貯留した雨水を、日々の敷地内での散水やトイレの洗浄水(雑用水)として有効活用することで、貴重な上水(水道水)の消費量を削減し、水資源の持続可能な保全に直接貢献できます。
ゴール11「住み続けられるまちづくりを」への貢献
近年激甚化するゲリラ豪雨において、降った雨を一時的に地下へ引き込んでゆっくり排水する「流出抑制(ピークカット効果)」により、敷地内および地域周辺の内水氾濫(都市型水害)リスクを低減させ、災害に強い強靭なまちづくりの実現に貢献します。
ゴール12「つくる責任 つかう責任」への貢献
再生プラスチック(リサイクル材)を部材に採用した高強度な貯留槽を選定することで、廃棄物の削減と持続可能な生産消費パターンの構築(サーキュラーエコノミー)を企業として実践・証明することが可能です。
再生プラスチックにも強度を
強度がなければ使えない
プラスチック製の雨水貯留槽・浸透槽のメーカーのほとんどは、材料に再生プラスチックを使うことで環境負荷を緩和しています。
リス興業株式会社の雨水貯留浸透槽「リスレインスタジアムⓇII」は、素材の一部にリサイクル材料を使用していますが、ホームページでは「地下に埋めても耐えうる品質を確保した製品です」と記載されています。
雨水貯留槽・浸透槽は地下に設置するため、地上部分を有効活用できることが大きなメリットです。地上部分は駐車場として活用されることも多く、その場合、地下の貯留槽・浸透槽の素材は、上に車が乗っても壊れないだけの強度が求められます。単に再生材料であれば良いというものではないのです。
しかし再生プラスチックは、バージン材のプラスチックよりも強度が落ちるとされるのが一般的。そこで各社ともさまざまな工夫で、貯留槽・浸透槽として十分な強度を確保する工夫をしています。
それでも大事、サステナブル
積水化学工業株式会社の「クロスウェーブ」は再生ポリプロピレンが材料であること同時に、独自の組み上げ方法を導入することで、T-25車両通行対応の耐荷重設計とレベル2の耐震性を確保しています。T-25とは、車両総重量が25トントラックに相当するような荷重のことを指していますので、かなりの強度があると言えます。
強度が確保された上で、リサイクルへの取り組みによる環境との調和は欠かせません。株式会社明治ゴム化成の「アクアトラップ」は、使えなくなったコンテナなどのプラスチック材料を原料としており、さらに廃棄する際にもリサイクルされる製品です。このリサイクルの一連の作業を、すべて自社の関連会社でできることも、サステナブルな取り組みとして注目されます。
土壌を汚染させない
環境庁告示、RoHS基準クリア
地下にプラスチック製品を埋設するということは、上に車も乗せられるだけの強度以外に、別の点でも要求される性能があります。
それは、非汚染性。雨水貯留槽・浸透槽の素材が土壌や水を汚染しないという性能が、高いレベルで求められます。
リス興業株式会社のリスレインスタジアムⓇIIは、素材の再生プラスチックが、環境庁告示第46号「土壌の汚染に係る環境基準について」や、RoHS基準に適合していることにポイントを置いています。
SDGs貢献へ欠かせない要素に
環境庁の告示は、カドミウムやシアンなどの汚染物質ごとに詳細な測定方法を定め、土壌中から検出されるのがごくわずかな量であるか、または全く検出されないことを求めています。
RoHS基準は、鉛や水銀など10種類の有害物質が製品中に含まれる量をごくわずかに制限する基準です。リサイクルを容易にし、埋め立てや焼却をした際に環境に影響を与えないようにするのが目的です。
環境庁告示とRoHS基準の両方を達成しているということは、高いレベルで環境との調和が図られている製品であると言えるのです。
積水化学工業株式会社のクロスウェーブのホームページでは、耐薬品性や耐水性に優れ、水を汚染しないことに力点が置かれています。ほかの企業も、自社製品に環境汚染がないことを同様に強調。これは、環境に与えないという性能が、SDGsに欠かせない大事な要素であることが強く認識されているからです。
企業の不動産価値を高める環境性能評価(CASBEE)との連動
雨水貯留槽の導入は、環境貢献という社会的な側面にとどまらず、開発・保有する不動産の経済的価値向上にも直結します。
「CASBEE」や「グリーンビルディング認証」での加点要件
建築物の環境性能を総合的に評価する公的システム「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」において、敷地内での雨水利用システムや雨水流出抑制対策は、「水資源の保護」および「熱島現象(ヒートアイランド)の緩和」の項目で明確な加点対象となります。
認証で高いランク(星)を獲得することは、企業のESG投資における評価向上や、対象物件の不動産価値・テナント誘致力の向上に直結する実務的なメリットを生み出します。
SDGsへの貢献度で製品選び
そもそも、治水能力を高めるという雨水貯留槽・浸透槽の基本的な性能だけでも、SDGsに大きく貢献していると言えるでしょう。しかし、貯留槽・浸透槽のメーカーはそれだけにとどまらず、素材であるプラスチックの性能面からも、さらにSDGsに貢献しようとさまざまな取り組みを進めているのです。
また貯水槽には、利水面でのメリットがあることも見逃せません。貯水槽に溜まった水は、地上の植物への散水に活用できるだけでなく、災害時の生活用水として活用できる点は、SDGsの観点からも見逃せません。
貯留槽・浸透槽の設置する場合のメーカー選びには、こうした面でのSDGsへの貢献具合も大きなポイントとなることは間違いないでしょう。
まとめ
プラスチック製雨水貯留槽・浸透槽は、高い構造強度と非汚染性・リサイクル性を両立することで、環境保護と治水機能を高いレベルで融合させています。
SDGsの各ゴール(6・11・12など)への直接的な貢献はもちろん、CASBEE認証の取得を通じた不動産価値の向上やESG投資対策など、企業にとって多角的なメリットをもたらします。現場の施工条件に加え、サステナビリティ面での製品性能にも着目した選定が重要です。

