設置場所と現場条件から導く
「雨水貯留槽の選び方」3つの基準
雨水貯留槽の製品選定にあたっては、メーカーのサポート体制や実績だけでなく、設置する現場の物理的・環境的条件に応じた仕様を見極めることが極めて重要です。設計・施工の現場条件から導くべき3つの具体的な選定基準を解説します。
1. 設置場所の「耐荷重要件(駐車場下か緑地か)」で選ぶ
雨水貯留槽を埋設する地上の利用目的によって、必要とされる構造強度が大きく異なります。公園や緑地の地下であれば標準的な耐荷重要件で対応可能ですが、商業施設・物流倉庫・分譲マンションなどの「駐車場下」や「敷地内車路」に埋設する場合は、大型車両(総重量25t)の通行・旋回に耐えうる「T-25対応」の高剛性製品を選定する必要があります。また、上部からの荷重を地盤へ安全に分散させるための適切な土被り厚を確保できるかどうかも設計上の必須チェック項目です。
2. 敷地の制約(地下水位・狭小地)に合わせた「形状」で選ぶ
現場の地中環境や敷地形状に応じた製品のレイアウト柔軟性も欠かせません。地下水位が高いエリアや、岩盤・既設埋設物によって深く掘削できない現場では、設置深さを抑えられる「浅埋設型(薄型)」製品の採用が適しています。また、大型重機の搬入・旋回が困難な都市部の狭小地においては、人力での運搬・組み立てが可能な軽量ユニット構造のプラスチック製部材を選ぶことで、施工上のボトルネックを解消できます。
3. 予算と工期に直結する「材質(プラスチック製 vs コンクリート製)」で選ぶ
雨水貯留槽の代表的な材質である「プラスチック製」と「コンクリート製」には、それぞれ施工性とコスト面で明確な差異が存在します。現場打設やプレキャストのコンクリート製は非常に堅牢ですが、躯体が重く養生期間や大型重機の占有が必要となるため、工期が長くなり施工費用がかさむ傾向があります。
一方、プラスチック製貯留槽は空隙率が95%以上と非常に高く、掘削量および残土処分費を最小限に抑えることが可能です。さらに、現場での人力組立てが可能で養生期間が不要(ゼロ)なため、大幅な工期短縮と総合施工コストの削減につながり、現在の民間開発において主流の工法となっています。
雨水貯留槽を選ぶ際に重視したいポイント
品質・安全性
雨水貯留槽の品質・安全性については、公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会が制定する「雨水貯留浸透技術評価認定制度」によって、一定の要件を満たした技術(製品)に対して評価認定書を発行しています。そのため、同協会の認定を受けた製品については、機能や性能に大きな差はありません。
上記認定とあわせて、品質マネジメントシステムの国際規格「ISO9001」を取得しているかどうかもメーカー選びのポイントとなります。ISO 9001は、一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足を向上させるためのマネジメントシステム規格であり、企業としての品質・安全への取り組みを判断する指標となります。
施工実績
雨水貯留槽は、設置する用地の規模や形状、土壌、その他さまざまな条件によって工事内容も変わります。設置場所に適した設計や工事を行うには、さまざまなケースへの対応が期待できる、施工実績の豊富な会社に依頼しましょう。
施工実績は、会社のホームページやパンフレットで確認することができます。施工実績を公表しているかどうか、どのような施工事例があるのか、対応している工事規模の大小についてもチェックしておきましょう。
提案力・対応力
施工実績とあわせて確認したいのが、提案力や対応力です。雨水貯留槽を安全に運用し、長く機能を維持させるためには、設置場所の条件・環境に合わせた設計・施工が重要になります。そのため、ケースに合わせた提案、対応ができる会社であるかどうかを確認しましょう。
工数・納期
雨水貯留槽の施工にあたり、工事日数や作業人員などの労務工数はそのままコストに直結します。つまり、施工しやすい製品であるかどうかはコスト軽減の指標になります。会社選びの際には工事内容についても確認し、材料の搬入が容易かどうか、組立に重機等が必要かどうか、施工後の養生期間など、工数・納期に影響する部分をチェックしましょう。
管理・メンテナンス
雨水貯留槽は、長く使用し続けることを想定し、管理・メンテナンスがしやすい製品を選ぶことも大切です。雨水貯留槽のメンテナンスには、内部に人が入って行うものや、自走式カメラを遠隔操作しながら確認・清掃できるもの等があります。
環境への配慮
地球環境に配慮した製品選びは、メーカーだけでなく施工主の企業責任としてもその姿勢を問われています。導入しようとしている施設や製品が3R(リデュース・リユース・リサイクル)の視点で設計されているかどうか確認してみましょう。
プラスチック槽を採用する場合は、部材が再生プラスチックを使用しているか(資源の再利用)、リサイクルできるものか(再資源化)、産業廃棄物の発生抑制について考慮されているか、といった点に着目します。これらの取り組みを判断する指標として、メーカーがISO14000(環境マネジメントシステムの国際規格)を取得しているかどうかもチェックしておくとよいでしょう。
品質・安全性、施工実績を備えた
雨水貯留槽製品&メーカー
雨水貯留槽を選ぶ際には、ただ単に水を溜めるための容器として見るのではなく、上記のような複数の側面から総合的に評価することが重要です。これらは、製品が長期にわたって安定して機能を果たし、使用する側の満足を保つために不可欠です。さらに、社会の持続可能な発展に貢献する観点からも、これらの基準を満たす製品選びは、非常に重要な意味を持ちます。
ここでは、上記の全ての基準を満たすことで、優れた雨水貯留槽を提供している製品を2つ紹介します。
全国の協力店により施工をサポート
クロスウェーブ(積水化学工業)
| 提案力・ 対応力 |
全国協力店により設計・施工をサポート、条件に適したシリーズや施工方法・CAD図面を提案 |
|---|---|
| 品質・ 安全性 |
4工場でISO9001取得、雨水貯留浸透技術協会の技術評価認定・製品認定 |
| 施工実績 | 1998年の発売以来、国内の累計施工件数 約13,000件以上・300万m³以上(2023年3月時点) |
| 施工の 容易さ |
掘削~埋め戻しまで6ステップ、人力による積み上げで重機や特殊車両などの作業を軽減 |
| 管理の 容易さ |
点検孔に作業員が入って清掃できる設計 |
| 環境配慮 | ISO14001取得 素材に再生ポリプロピレンを使用、耐薬品性や耐水性があり水を汚染しない |
- 小規模から大規模面積まで対応可能
- 公式HPより、クロスウェーブシリーズのCADデータをダウンロードできる
容易な施工・維持管理でコスト削減
リスレインスタジアムⓇII(リス興業)
| 提案力・ 対応力 |
設計図を無料で作成、HPで貯留量、空隙率、浮力などの計算シミュレーションが可能 |
|---|---|
| 品質・ 安全性 |
製造グループ会社でISO9001認証取得、雨水貯留浸透技術協会の技術評価認定・製品認定 |
| 施工実績 | 累積8,700件以上、貯留量130万m³以上 (2022年度末時点) |
| 施工の 容易さ |
人力のみで組立て、側板部材はワンタッチで取付け、軽いのに1ユニットが大き目で工数を短縮、コストダウンにつながる |
| 管理の 容易さ |
自走式カメラやバキュームホースで点検・清掃、ピンポイント補修ができ人件費削減も |
| 環境配慮 | ISO14001認証取得、リサイクル材料を使用、環境庁告示第46号「土壌の汚染に係る環境基準について」や欧州RoHS基準にも適合 |
- オプションで堆砂壁仕様の対応が可能
- 搬送にパレット不要なので施工後の産業廃棄物処理が不要、コストを削減できる
選定基準:Googleで「雨水貯留槽」で検索(2023年7月25日時点)、100位までに公式サイトが表示された製品(メーカー)の中から、➊OEMや他社製品を扱う会社や商社を除外。➋自社ブランド製品(プラスチック)を提供するメーカーを取り上げました。その中から、下記すべてに対応する2社を選定しています。
■提案力・対応力…設計図作成や提案について対応できる内容詳細が公式サイトに明記されている。
■品質・安全性…ISO9001(品質マネジメントシステム)を取得している。
■施工実績… 公式サイトに実績数値を公表しておりその数値が1,000件以上である。
■施工の納期や工数を抑えられる…納品・施工に関する簡便性について、根拠も併せて公式サイトに明記されている。
■管理・メンテナンスの簡便性…管理やメンテナンス・補修の容易性について、根拠も併せて公式サイトに明記されている。
■環境への配慮… ISO14001(環境マネジメントシステム)を取得、かつ、再生素材使用など、環境への配慮について公式サイトに明記されている。
まとめ
雨水貯留槽を選定するにあたっては、設置する現場の荷重要件(T-25対応等)や地盤・敷地制限に応じた仕様を見極めることが重要です。その上で、品質・施工実績・提案力・メンテナンス性・環境配慮といったメーカーの総合力を客観的に比較・評価することが成功の鍵となります。
信頼できるメーカーへの早期相談と最適な施設計画
現場条件に適した製品の選定や、CAD図面の作成・浮力計算・各種行政申請サポートなど、実務における技術的課題がある場合は、施工実績と技術力に定評のある専門メーカーへ初期段階から相談し、安全でコストパフォーマンスに優れた雨水貯留システムを構築することをおすすめします。

