公園・スポーツ施設に雨水貯留槽を導入するメリットと設計ポイント
公園や大規模な競技場・グラウンドなどのスポーツ施設は受雨面積が広いため、周辺地域への一括流出を防ぐ「流域治水」の観点から、雨水流出抑制対策が強く求められる領域です。地下埋設型の雨水貯留槽を導入することは、治水対策としての義務を果たすだけでなく、施設利便性の向上や維持管理費の削減においても大きな客観的メリットをもたらします。
1. グラウンドの水はけ改善と「ぬかるみ」の早期解消
スポーツ施設や学校グラウンドの運営において、降雨後の迅速な利用再開(水はけの速さ)は施設の稼働率やイベント運用に直結する非常に重要な要素です。
表層に敷設した暗渠排水管と地下の雨水貯留・浸透槽をスムーズに連携させることで、地表の雨水を滞留させず素早く地下空間へ引き込み・排出できます。グラウンド表面のぬかるみを早期に解消し、雨上がりでも短時間で安全に競技やイベントを再開できる環境を整えられます。
2. 芝生・植栽の維持管理にかかる「散水用水」の確保とコスト削減
サッカー場や陸上競技場などの天然芝グラウンド、および都市公園に広がる緑地・植栽エリアでは、平時の育成や乾燥防止のための散水作業に膨大な水量と水道料金が必要となります。
大雨時に地下貯留槽へ溜めた雨水をポンプで汲み上げ、スプリンクラーによる芝生への散水や植栽への灌水、夏場の打ち水などへ再利用することで、貴重な上水道の使用量を抑え、毎年の維持管理費用(ランニングコスト)を大幅に削減することが可能です。
3. 競技機能を損なわない「浅埋設対応」と安全性
グラウンドや公園の地下に貯留槽を埋設する際、上部でスポーツが行われたり、設営車両や点検車両が進入したりしても陥没しない強度が不可欠です。また、河川や海岸に近い公園などでは地下水位が高く、深くまで掘削できないケースも少なくありません。
高剛性なプラスチック製貯留槽には、土被りを浅く抑えられる「浅埋設・薄型タイプ」の製品が存在し、地下水位が高い現場や掘削制限がある敷地でも地上の競技面積を削らずに導入が可能です。T-25(総重量25トン)などの耐荷重規格に対応した製品を選定することで、上部を駐車場や車路として併用することもできます。
サッカー場の雨水貯留槽施工事例

https://lyprone.com/hydrostuff/case/#case2
- 製品名・メーカー名…ハイドロスタッフ(城東リプロン株式会社)
- 施工タイプ…貯留タイプ
- 貯水量または広さ…不明
引用元:城東リプロン公式サイト(https://lyprone.com/hydrostuff/case/#case2)
ハイドロスタッフについて
ブラスチック性の部材の円柱と梁を千鳥配置でかみ合わせてつないでいく構造で、地震発生時のせん断変形に強いのが特長です。流入枡で取り切れずに内部に流れ込んだ細かい砂をパーティション内の1カ所に集めて点検口から清掃できるように開発されました。長期にわたって貯留槽の機能を維持することができます。
陸上競技場の雨水貯留槽施工事例

https://www.nitto-geo.co.jp/works.html
- 製品名・メーカー名…ジオプール工法AE-1(株式会社日東ジオテクノ)
- 施工タイプ…浸透タイプ
- 施工場所や施設名…陸上競技場
- 貯水量または広さ…289m³
引用元:日東ジオテクノ公式サイト(https://www.nitto-geo.co.jp/works.html)
ジオプール工法AE-1について
校庭や公園、駐車場や宅地などへの設置を対象としており、降った雨水を地下に貯留することで水害対策の一翼を担っています。プラスチック製部材でできたAE-1槽を長繊維不織布でできた保護シートで包み、底面や側面から雨水を地下に浸透させる浸透タイプと、遮水シートなど三重のシートで包む貯留タイプがあります。
グラウンドの雨水貯留槽施工事例

https://www.tensho-plastic.co.jp/cases/detail.php?id=29DLLTW
- 製品名・メーカー名…テンレイン・スクラム(天昇電気工業株式会社)
- 施工タイプ…貯留タイプ
- 施工場所や施設名…神奈川県伊勢原市
- 貯水量または広さ…111m³
施設増設工事
引用元:天昇電気工業公式サイト(https://www.tensho-plastic.co.jp/cases/detail.php?id=29DLLTW)
テンレイン・スクラムについて
軽量で耐久性がある一方で、点検施設からのメンテナンスが容易な雨水貯留浸透施設です。切欠加工が不要で、ブロック同士を組み合わせていくことでどこにでも設置できます。ブロックを搬送する際の積載効率が良いため、運搬の負担が軽減されているほか、再生材の使用で環境への負担も少なくなっています。
公園の雨水貯留槽施工事例

https://www.nitto-geo.co.jp/works/index/8
- 製品名・メーカー名…ジオプール工法AE-1(株式会社日東ジオテクノ)
- 施工タイプ…浸透タイプ
- 施工場所や施設名…船橋市
- 貯水量または広さ…1281m³
引用元:日東ジオテクノ公式サイト(https://www.nitto-geo.co.jp/works/index/8)
ジオプール工法AE-1について
容器包装リサイクル法により、市町村が収集したプラスチック製の容器包装を材料にした再生ペレットを原料に、秋田・岐阜・茨城・千葉の工場で生産されています。強度試験では、鉛直方向、水平方向のいずれも業界有数の強度を確保しており、組み上げた浸透槽の上でクレーン車による作業も可能です。
都市公園の雨水貯留槽施工事例
長野県千曲市の都市公園「戸倉宿キティパーク」の造成により、雨水の流出量が増加するのを抑制し、周辺住宅への浸水被害の軽減するために、約1200m³の雨水貯留施設を設置しました。公園最下部に集水区域を広く確保し、公園としての調和を図るため調整池の周囲は植生土のうによる構造としました。整備後、浸水被害は発生していません。
参照元:【PDF】国土交通省 資料(事例集)(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001429913.pdf)
まとめ
公園やスポーツ施設における雨水貯留槽の導入は、周辺地域に対する治水対策として欠かせないだけでなく、「ぬかるみの解消による施設利用率の向上」や「散水・雑用水利用によるコスト抑止」など、施設運用上のメリットを大きく生み出します。
敷地条件に応じた最適な設置計画を
地下水位の高い立地に対応する浅埋設仕様や、大型重機の進入に耐える高強度設計など、現場の施工条件や用途に応じたスペックの選定が大切です。
広大な敷地を無駄なく活用し、機能的で持続可能な施設整備を実現するためにも、公園・スポーツ施設での施工実績やノウハウが豊富な専門メーカーへの初期相談を行い、最適な工法と設計プランを検討することをおすすめします。

