雨水貯留槽と浸透トレンチは似て非なる施設です。両者の仕組み・効果の違いと選び方を、わかりやすく解説します。
雨水貯留槽と雨水浸透トレンチの違いを一言でいうと?
雨水貯留槽は「雨水を一時的に貯めてゆっくり放流する施設」、雨水浸透トレンチは「雨水を地中へ浸透させる施設」です。
両者はいずれも、河川や下水道への雨水流出を抑える「流出抑制施設」に含まれます。流出抑制施設は、水を貯める「貯留施設」と、水を地中へ還す「浸透施設」に大別され、雨水貯留槽は前者、雨水浸透トレンチは後者にあたります。
つまり、同じ目的を持ちながら雨水の処理方法が正反対である点が、両者の最大の違いです。まずはこの大枠を押さえておきましょう。
それぞれの仕組みと特徴
雨水貯留槽の仕組みと特徴(貯めて放流・再利用)
雨水貯留槽は、公園や駐車場などの地下に設置した貯留槽へ雨水を集め、許容放流量の分だけをゆっくりと放流していく施設です。
貯めた雨水は、製品によっては庭木や芝生への散水、トイレ用水、洗車、災害時の緊急用水源などに再利用できる点も特徴です。部材にはコンクリート製とプラスチック製があり、コンクリート製は空隙率が約70~80%で荷重に比較的強く上部利用に向く一方、プラスチック製は空隙率90%以上で軽量かつ施工が容易ですが、荷重に弱く上部利用には注意が必要です。
用途や設置条件に応じた部材選定が求められます。
参照元:東京都総合治水対策協議会|「公共施設における一時貯留施設等の設置に係る技術指針」(https://www.tokyo-sougou-chisui.jp/shishin/GijutuShishin.pdf)
雨水浸透トレンチの仕組みと特徴(地中へ浸透)
雨水浸透トレンチは、掘削した溝に砕石などの充填材を詰め、その中に浸透ますと連結した有孔管を設置し、雨水を導いて充填材の側面・底面から地中へ浸透させる施設です。
砕石を使う一般的なタイプは空隙率が30〜40%です。近年は砕石の代わりにプラスチック製の部材を使うタイプもあり、空隙率90%以上で貯留量が大きく軽量ですが、砕石式に比べて荷重に弱いため、上部利用には注意が必要です。
いずれも施工が比較的容易で地上部を活用できる一方、目詰まり対策として流入ますでの維持管理が欠かせません。
参照元:東京都総合治水対策協議会|「公共施設における一時貯留施設等の設置に係る技術指針」(https://www.tokyo-sougou-chisui.jp/shishin/GijutuShishin.pdf)
効果の違い|貯留槽は「ピークカット」浸透トレンチは「ベースカット」
効果面では、雨水貯留槽は洪水のピーク流量を抑える「ピークカット」、雨水浸透トレンチは継続的に水を地中へ逃がす「ベースカット」の役割を担います。
貯留槽はピーク時の流出を効果的に下げられますが、満杯になると機能しなくなる点に注意が必要です。一方の浸透トレンチは降雨規模によらず一定の浸透機能を発揮するため、長時間の降雨に強い反面、効果が土質や地形に左右されます。
さらに浸透施設には、地下水の涵養や湧水の復活といった水循環環境の改善につながる副次的な効果も期待できます。
どちらを選ぶ?選定時に確認したいポイント
どちらを選ぶかは、複数の判断軸を照らし合わせて決めることが大切です。まず浸透トレンチは効果が地盤の浸透能力に左右されるため、設置予定地の地盤・土質の確認が欠かせません。
次に、施設上部を駐車場や通路として使う場合は荷重条件、そして点検・清掃のしやすさや設置・維持管理のコストも比較しましょう。用途別では商業施設での採用が多い傾向にあり、住宅・学校・公園・道路と続きます。
加えて、自治体ごとに雨水流出抑制の条例や補助金・優遇税制が定められているため、計画前に必ず確認しておくことをおすすめします。
※平成19年度時点でのプラスチック製地下施設に関する情報です。
参照元:クリエイト株式会社|都市水害の予防や水資源の有効活用で注目を集める「雨水貯留浸透施設」(https://www.cr-net.co.jp/topics/society/52/)
まとめ
雨水貯留槽は雨水を貯めてゆっくり放流し洪水のピークを抑える施設、雨水浸透トレンチは雨水を地中へ浸透させ継続的に流出を抑える施設です。
満杯で機能が止まる貯留槽と、土質に左右される浸透トレンチには、それぞれ一長一短があります。地盤や上部利用、コスト、自治体の条例を踏まえ、目的に合った施設を選びましょう。

