近年増加する水害への対策として注目されている雨水貯留槽について、本当に浸水を防ぐ効果があるのか疑問を持っている人に向けて、実際の導入事例をご紹介します。本記事では、駐車場や処理場跡地を活用して効果が得られた実例と、導入しやすいプラスチック製雨水貯留槽ならではの特徴について分かりやすく解説します。
雨水貯留槽の導入で効果が得られた実例
雨水貯留槽を設置し、一時的に雨水を貯留することで、局所的な浸水被害を抑える効果が実証されています。ここでは、実際にプラスチック製の雨水貯留槽を導入して水害防止に役立ったとされる国外の具体的な事例を解説します。
インドネシアの駐車場での浸水防止効果(JICA事業)
JICA(国際協力機構)の民間連携事業を通じ、インドネシアの公共施設内の駐車場2か所に浸透型のプラスチック製雨水貯留槽(PRSS)「ニュープラくん」を設置した実例です。導入前は雨が降るたびに水浸しになっていた駐車場でしたが、設置後は雨水が溜まらなくなったという確かな効果が現れました。また、大型重機を必要とせず、短い工期で効果が現れた点も現地で高く評価されています。
参照元:JICA|地下空間を利用して都市の洪水被害を食い止める 秩父ケミカル株式会社(東京都)(https://www.jica.go.jp/activities/schemes/priv_partner/sdgs/2022/20220408_01.html)
その他水害抑止のデータが得られたとされる事例
兵庫区和田岬地区での浸水シミュレーションと効果
神戸市兵庫区の和田岬地区(中部処理場周辺)における浸水対策の実例です。同地区は低地盤のため大雨による浸水が課題でした。そこで、廃止された中部処理場の生物反応槽の側壁・底版を残し、内部にプラスチック製の貯留材を設置して雨水貯留施設として有効活用しました。
整備にあたっては、昭和47年7月に記録した既往最大降雨を用いて浸水シミュレーションを実施しています。「床上浸水が発生せず、車の通行が可能である浸水深以下になるように設定された」という明確な効果目標を掲げており、既存ストックを活用して治水安全度を向上させた成功例と言えます。
参照元:国土交通省|Ⅱ事例集(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001728945.pdf)
集中豪雨から敷地を守る「流出抑制(ピークカット)」の客観的メカニズム
雨水貯留槽が水害を防ぐ背景には、単なるイメージではなく「流出抑制(ピークカット)」という物理的な物理メカニズムが存在します。
下水道への排水を時間差でコントロールする「ピークカット効果」
短時間に猛烈な雨が降るゲリラ豪雨の際、敷地内の雨水が一気に公共下水道や河川に流れ込むと、排水能力を超えて周囲一帯が冠水(内水氾濫)する原因になります。
雨水貯留槽は、降った雨を一時的に地下へ引き込んで「100%ホールド」し、雨のピークが過ぎた後に「オリフィス(流出制限弁)」等を用いて少しずつ時間をかけて下水道へ安全に排水する仕組み(ピークカット効果)を備えています。これにより周辺道路や自社敷地の浸水確率を劇的に低減させることが可能です。
企業の信頼性を高める「BCP(事業継続計画)対策」としての導入効果
雨水貯留槽の導入は、地域社会の水害を防ぐ「治水・公助」の側面だけでなく、施設を保有する企業自身が直接的に得られる「自助・ビジネス上のメリット」にも直結します。
操業停止リスクを回避する「資産・設備の防護効果」
工場や物流倉庫、商業施設などの地下に大容量の貯留槽を整備することで、敷地内の冠水を未然に防ぎ、1階の製造ラインや保管商品、重要設備(受変電設備など)の水没・破損を回避できます。
万が一の豪雨でも操業停止(ダウンタイム)に追い込まれるリスクを最小限に抑え、サプライチェーンの維持や顧客への継続的な供給責任を果たせるという、経営上の多大な防衛効果を発揮します。
災害発生時における「非常用生活用水・消火用水の確保」
雨水貯留槽に貯めた水は、日常的な散水やトイレの洗浄水として利用できるだけでなく、地震や台風で断水が発生した際の「非常用雑用水」としても大きな価値を持ちます。
避難所となる学校や企業のBCP拠点において、断水時でも数日分のトイレ洗浄水を確保でき、さらに初期消火用の「消火用水」としても転用可能であるなど、複合的な防災効果を具体的に享受できます。
プラスチック製雨水貯留槽の主な特徴・機能
前述の事例でも使用されている「プラスチック製」の雨水貯留槽には、水害対策を後押しする機能的なメリットがあります。構造や特徴の判断基準として、以下の要素が挙げられます。
第一に、90〜95%以上という高い空隙率です。これにより掘削量や残土量を大幅に減らすことができ、トータルコストを抑えられます。第二に、本体の重量が約3kgなど非常に軽量である点です。大きな力を必要とせず作業性が良いため、短い工期で設置が可能です。
さらに、長期クリープ性能などの確かな耐久性を備えており、駐車場の下にも安全に埋設できる強度を持っています。
参照元:リス興業株式会社|雨水貯留浸透槽-リスレインスタジアムⅡ(https://www.risu-kogyo.co.jp/risurainstadium/)
参照元:秩父ケミカル株式会社|ニュープラくん(雨水貯留槽) (https://www.titibu.co.jp/products/newpra/)
まとめ
雨水貯留槽は、インドネシアの駐車場などの活用事例から、水害防止効果を発揮できることがわかりました。プラスチック製の雨水貯留槽の事例については各メーカーのサイトでも確認できるため、気になる場合は他の事例なども直接確認してみてもよいでしょう。

